シトロエンと私-BX

さてついにシトロエンBX(1987年式、左ハンドル、薄青メタリック)が我が家にやってきました。ボビン式のメーターが気に入っていたのに、ステアリングやダッシュボードのあまりにも普通になった光景は残念でしたが、納車され初めて運転席に座った時の気持ちは今でもはっきり覚えています。「おお、フランスで走っているのと同じシトロエンに今乗っている。」という高揚した気持ちでした。なぜか室内の匂いまでもが素晴らしく感じます。シトロエンに憧れながらも、「壊れる。金食い虫」などの悪評に怖気付いて日本車を数台乗り継いできた私の偽らざる気持ちでしたが、今から考えるとお笑いですね。(今の気持ちは、もっと早くからシトロエンに乗っとけばよかった、です。)私のBXのナンバーは7700、ラッキーナンバーですね、とデイーラーの担当者が喜ばせます。

さてプジョーに吸収され信頼性も高まったのでは?との私の期待もすぐに粉々になります。なんと納車数日後の朝、駐車場の床が緑の液体で分厚く塗り込められています。なぜか頭のどこかで映画「吸血ゴケミドロ」の題名が浮かびました。LHMが500ccぐらいは漏れています。ディーラーに電話するとすぐ伺いますとのこと、その日のうちにサービスが来たようで、夕方帰宅した時は何事もなく治っていました。しかし噂通り、ハンドリングと乗り心地は素晴らしいもので、最大の満足感を与えてくれました。誰しも認めるように、シトロエンの一番の特徴は乗り心地でしょうが、運転していていてその幸福感で思わずニンマリさせてくれる車は他にありません。

残念ながら「金食い虫」との評判も本当でした。エアコンがよく不調になりました。8畳用の家庭用エアコンが5万円ほどで買えるのに、車のエアコン部品がなんでこんなに高いの?と。3年後の車検をディーラーに出したところ25万円ほどの請求書にもちょっと高いと思いました。内訳を見ると、車検代行費用として正確には覚えてませんが7万円ほどの請求です。今はもっと安いようですが、その当時の外車を買う人は細かいことには文句も言わない大らかな人が多かったのでしょうか?ちょうどその頃「ユーザー車検」という言葉を知り、車検は自分で可能で、それももっと安くできることを知りました。これはという本を1冊熟読した後、2回目の車検は独りで千早の陸運局に行きました。以後、今日まで車検は全てユーザー車検です。ディーラーにとっては確実に嫌なユーザーですね。

エアコン以外には当然LHMオイル漏れに注意が必要でした。運転していて眼前にSTOPの文字が突如出現して驚くのはほとんどがハイドロ系の異常です。BX、CX、XMでは停止時にお尻が不意に上昇したり低下したりします。エグザンティアではどうだったのでしょうか?C6ではこの挙動は見られません。停車時のこの挙動を昔のハイドロニューマチックの一番の欠点という人もいますが、僕はこの上下動が大好きでした。ドウドウと、なにやら荒馬に乗ってイナしているような、シトロエンがただの車ではない生き物のように感じます。停車する時のスピードとブレーキのふみ具合によって、停車後のお尻の動き方が微妙に変化するようです。シトロエンという普通ではない車と対話しているという気持ちと、後ろの車がびっくりしているだろうなあという下世話というか子供っぽい気持ちもありました。しかし幸か不幸か僕のような変人は少なかったようで、そのうちハイドロニューマチックサスペンションは改善され、C6はそんな挙動もなく何時間停車していても車高は下がりません。車高が下がらないのは実用的には大賛成ですが、昔のように朝エンジンをかけた後、老いた老犬がゆっくりと目覚めて身体を起こすような動きを見れなくなったのはちょっと寂しく感じます。「昔は良かった。」と老人の意味ない嘆き節になって来ました。それでは、今日はこれくらいで。